私が学習院大学理学部物理学科に着任して,ほぼ1年が経過しましたが,その間に受けた印象の一つは,学習院大学で行われている教育の密度と質が高いということです(もう一つ挙げると研究設備等の研究環境が良いこともあります).ご存じのように,ここの教員は非常に優秀な方がそろっているわけですが(著名な研究業績をあげて色々な賞を受けており,私などはいつも身の引き締まる思いをしています),その人たちが真剣に教育に取り組んでいます.講義の準備にも真剣に取り組まれており,世の中の物理教育を変えていくような教科書が学習院での講義から生まれています.
学習院で行われている教育は,私が以前つとめていた大学での教育と対照的だなと思うことがあります.以前つとめていた大学のスタッフも優秀で良く組織されて運営されていましたが,どうしても大人数であるということと,入学時点で学科が決まっていないというその大学固有の事情からくる制約があったように思います. その大学の理科系の1年生はおよそ2000人でしたので,例えば物理実験でのスタッフ1人当たりの学生数には歴然とした差があります. それから,進学する学科が決まるのは2年生の後半以降で,希望者が多い学科への進学は,語学や体育を含めた成績で選別されるという仕組みでしたので(例えば理学部物理学科に進学できるのは2000名中約80名),物理学科に進学したい学生は,語学や総合科目でも良い成績を修める必要があります.
そういうわけで,いささか我田引水的な結論ですが,大学で真剣に物理を勉強したいと思っている人には,学習院を含めた私立大学も真剣に検討されることをお奨めします.(といっても,学習院大学が全ての人にとってパラダイスであるというわけでもありません.少なくとも講義には欠かさず出るくらいの勉強を日頃からしてくれる人でないと,専門科目の単位が取得できなくて我々も困ってしまうということになってしまいます.)
Last modified: June 18, 1999